なぜスプレー缶には可燃性のガスが使われるのか

先日、札幌市豊平区でガス爆発がありました。不動産仲介業者の従業員が店内でスプレー缶のガス抜きをしていたときに、給湯器を使用したことでガスに引火したことが原因のようです。

スプレー缶のガスに可燃性があることを知らなかったのか疑いたくなるような出来事ですね。

そんなことは常識だとは思いますがそこから進んで、それではなぜスプレー缶には可燃性ガスが使われるのか考えてみたことはありますか?

可燃性ガスなんか使わなければスプレー缶がもっと扱いやすくなるかもしれません。ここではそんな疑問を解決していきたいと思います。

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スプレー缶の中にはガスが圧縮されて詰め込まれている

缶の中というのは、中身を押し出すためにガスもいっしょに詰め込まれており、高圧になっています。

缶の頭を押したとき噴射されて出てくるのは、消臭成分や整髪成分、殺虫成分などの目的の成分だけではなく、押し込まれていたガスもいっしょに出てきます。

中が高圧になっているおかげで目的の成分を最後まで出せるようになっているのです。

缶の中でガスは液体になっている

実は封入されるガスは、缶の中では高圧のために液体になっているのです。液体になってくれるおかげで、使用して中身が多少減っても中の圧力はそんなに大きく下がらずに済むのです。

どういうことかというと、中身が減って中の圧力が下がると、それを補うように液化していたガスが気体になってくれるので、液化した分がなくなるまでの間は圧力が高圧でかつ一定に保たれるのです。物質は液体から気体になると体積が増えるのです。

ただの空気を圧縮して封入したのではダメなのか

中身を押し出すためという目的であれば、わざわざ可燃性のあるガスなんかを使わなくても、そこらへんの空気を押し込んで入れておけばスプレー缶として機能すると思えるかもしれません。

でも、実際はそう簡単ではないのです。

少し圧力をかけるだけで液化する気体

気体を液化させるのに必要な圧力というのは気体の種類ごとに違っていて、スプレー缶に使うことを考えれば、そこまで高い圧力をかけなくても液化するものがものが当然好ましいです。

スプレー缶によく用いられているプロパンやブタン、ジメチルエーテルなどにはそういった性質があります。ただしこれらの気体は同時に可燃性も持っているのです。プロパンというのはあのプロパンガスのプロパンです。

ちなみに、常温ではプロパンは7気圧ほど、ジメチルエーテルは6気圧ほどで液化するそうです。この圧力がどのくらいかと言うと、地上は1気圧で、そこから水中に10m潜るごとに約1気圧ずつ増えてくので、50m潜ったところで感じる圧力がだいたい6気圧です。

空気も液化させればいいのでは?

空気に含まれる窒素や酸素も同じように高圧にすれば液化させられると思えるかもしれません。

しかし窒素や酸素は上に挙げたガスと違って、常温ではどんなに圧力をかけても液化しないのです。高圧にしてさらに低温にしてやらないと窒素や酸素は液化しないのです。

空気を詰めたとしたら

もし液化しないガスを詰めたスプレー缶があったとすると、使うたびに中の圧力が少しずつ減っていくので扱いづらいです。使い始めは勢いがめちゃくちゃ強くて、残り少なくなるころには弱くなってしまうでしょう。

二酸化炭素はというと液化はしますが、20℃ではだいたい57気圧までかけないと液化しません。もし仮にそんな気体を使うのであれば缶を丈夫にするために材料費が上がり、スプレー缶の値段が高くなり、さらに缶自体の重量も重くなってしまうでしょう。

可燃性がなく簡単に液化する気体があれば良いのだけれど

空気がダメだとしても、誰かがそんな物質を見つけたり、作り出すこともこの先どこかであるかもしれません。

実はそんな夢のような物質がかつて存在しました。

フロンという物質です。スプレー缶に入れたり、エアコンの冷媒として広く使われていましたが、大気中に放出されたあとにオゾン層を破壊するということが分かり、使用できなくなってしまったのです。

最後に補足として、缶の中でガスが液化しているというのはどういうものなのか簡単に物理の話をします(物理というより化学かもしれない)。

圧力によって気体から液体に変わるという現象

気体が高圧下で液体になるという現象はなかなか目にすることはないでしょう。しかし、その逆の現象は山の上で湯を沸かす時に見ることができます。

圧力が下がると液体は気体になりやすくなります。山の上では水が100℃に達する前に沸騰してしまうのはそのためです。

さすがに山の上程度の気圧の低さでは、常温では沸騰は起こらないですが、圧力を極度に下げていくと常温でも水の沸騰が起こるような圧力は存在します。

圧力に応じて液体と気体のバランスが決まる

密閉された容器の中に、ある物質の液体と気体がいっしょに存在しているとき、圧力に抑えられてこれ以上液体が蒸発して気体になれないところで止まっているです。

圧力がかかっているからと言って、全く気体になれないわけではありません。もし圧力が0の真空中に液体を置いたとしたら、一気に蒸発が起こり、気体がその空間を満たすことで圧力が生まれます。圧力が高まっていき、これ以上蒸発ができないところまで液体が気体になっていきます。

そしてこの液体が気体に蒸発しようとする力はどこから来るのかというと、温度なんです。蒸発するのにエネルギーが必要なので、周囲から熱を奪って気体になろうとします。

そして蒸発しようとする力と、気体側の圧力が釣り合うところまで蒸発が進みます。

温度によって蒸発しようとする力が変わるので、当然それと釣り合う蒸気圧(飽和蒸気圧と言います)も変わってくるのです。蒸気圧曲線というのは、この温度と飽和蒸気圧の関係を表すもので、物質ごとに決まっています。

さいごに

スプレー缶に入っているガスが持つ可燃性というのは、スプレー缶に求められる機能、利便性や環境破壊しないなどのいろんな条件を満たす上でいっしょについてきてしまうデメリットだったのです。