電気力線【電磁気学を分かりやすく解説】

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電場を上手く描くには

電場はベクトル場として表しますが、絵に書くとどんな風になるでしょうか。ベクトルを矢印として表現することにすると、プラスの点電荷の周りでは、その電荷を中心とする球面を想定したときに、球面を垂直に外方向へ貫いていく矢印が描けるでしょう。しかし、球面の半径を少しずつ変えながら描いていくと矢印だらけになって見えなくなってしまいますね。

そこでもう少しスマートに描けるものはないかと考え出されたのが電気力線です。

力の向きと大きさを線で表す

プラスの電荷から出てマイナスの電荷に入るように線を引いていきます。片方の電荷だけの場合は線は無限遠まで続きます。どの場所でも電場の向き(プラスの電荷が力を受ける向き)と一致するように描きます。

電気力線の密度が電場を表す

電場の強さをどう表すかと言うと、線の密度で表すのです。つまり、単位面積を貫く本数がその場所での電場の強さと等しくなるようにします。

そして、電荷のないところで線が現れたり消えたりしてはいけません。

なぜ電気力線で電場を表現できるのか

途中で線が現れたり消えたりせずに、線の密度で電場の強さを表すことがどんな場合にも可能なのかについて解説しておきます。

いま、ある電荷qがあったとして、その電荷を囲む任意の閉曲面を考えます。その閉曲面について電場を面積分すると、計算の答えがq/ε₀になるというガウスの法則があります。ε₀はその空間の誘電率です。(誘電率、ガウスの法則については別のところで説明します。)

語弊を恐れずに言うと、閉曲面がどんな形や大きさをしていても電荷を囲んでさえいれば、電場をその閉曲面全体について足し合わせてやると、中の電荷の大きさで決まる値になると言っているのです。大きく広がった閉曲面と、電荷の周辺だけを囲んだ小さな閉曲面では表面積は異なります。なのにその面上で足すと同じ値になるということは、電場は閉曲面の大きさに応じて濃度が薄まるようなものだと考えられませんか?つまり次元としては面密度(単位面積あたりで量を表したもの)に相当するのです。結局、電気力線の密度で例えられると言えるのです。

厳密に言うと、面密度に相当するのは電束密度の方なのですが、誘電率が付くかどうか違いだけなのでほぼ同じものと思って大丈夫です。あと、下の図は断面図を描いていると思って下さい。

それでは具体的に確かめてみましょう

点電荷の場合で考えてみる

点電荷qのつくる電気力線を考えます。qはプラスとします。この電荷から合計でΦ[本]の電気力線が出ているとします。点電荷なので、球対称に電気力線が広がります。すると、距離がrだけ離れたところでの線の密度は、Φを半径rの球の表面積で割ったものになります。そのため電気力線の密度は、点電荷からの距離rのみの関数としてかけることになり、電気力線の密度をDΦ(r)とすると

\( D_{\Phi}(r)=\dfrac{\Phi}{4\pi r^{2}}\)

と書けます。一方、距離rの場所での電場の強さE(r)は前回に求めた通り

\( E(r) = k \dfrac{q}{r^{2}} \)

kは比例定数でした。式の形を見ると、DΦ(r)とE(r)は両方ともrの2乗に反比例するということなので、よく似ています。式の形だけを考えても、電気力線の密度で電場の強さを表現できそうですね。

電気力線の密度と電場の強さを等しくするということは

\( D_{\Phi}(r)=E(r)\Longleftrightarrow\dfrac{\Phi}{4\pi r^{2}} = k \dfrac{q}{r^{2}}\)

を満たすようにΦを決めるということです。電気力線というものが人間が勝手に描いているものである以上、電荷から出る電気力線の本数自体には絶対的な意味はありません。好きなように決めてよいということです。それなら式がシンプルになるように決めたいところですね。上の式をΦについて解けば

\( \Phi = 4\pi kq\)

kは電場の式に登場する比例定数なだけなので、4πkの代わりに1/ε₀に置き換えても差し支えありません。そうしておく方が電場の式にも4πが入るため、ガウスの法則などを考えたときに式がスッキリするのです。

そんな風に置き換えると、電荷qから出る電気力線の本数Φは

\( \Phi = \dfrac{q}{\varepsilon_0}\)

と書くことができます。結局、DΦ(r)とE(r)は

\( D_{\Phi}(r)=E(r) = \dfrac{q}{4\pi \varepsilon_0 r^{2}}\)

となります。

ε₀は真空の誘電率を表す

先ほど出てきたε₀=1/4πkで比例定数を置き換えると点電荷qのつくる電場の強さE(r)は

\( E(r) = \dfrac{q}{4\pi \varepsilon_0 r^{2}} \)

と書けます。「電荷の間に働く力」は、「電荷の積をその電荷間の距離の2乗で割ったもの」と比例関係にありますが、単位も含めて定義が既に別のところでされている両者が数値として一致する訳がありません。ε₀というのは、そんな両者を結びつける比例定数の役割があります。大雑把に言えば、理論的に作り出された式と実際に測定される力を上手くつなぐためのつじつま合わせに過ぎないものなのです。真空中における比例定数なので真空の誘電率と呼ばれます。

真空ではない、空気も含めた一般の物質中ではその物質が起こす分極の影響で、上で言った両者の関係が真空中の場合と異なります。実際に測定される力が、真空の誘電率で考えた場合の理論値とずれてしまうんです。そこで誘電体中では代わりにその物質に固有の誘電率が用いられます。