プラズマクラスターにはどんな効果があるのか?メカニズムを分かりやすく解説

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プラズマクラスターとは何か

プラズマ放電により空気中の水と酸素から作り出される水素のプラスのイオン(H⁺)と酸素のマイナスのイオン(O₂⁻)には、カビ菌やウイルスの活動を抑えたり、ニオイを分解する作用があると考えられています。

プラズマクラスターというのは、そのイオンにシャープがつけた名前で、シャープのあらゆる家電に応用されています。

それでは水素のプラスのイオン(H⁺)と酸素のマイナスのイオン(O₂⁻)はどうやって発生させるのでしょうか。

イオン発生電極

イオンを発生させる仕組みを簡単に解説します。

図のように誘電体に電極をつけて、交流電圧をかけると放電電極の近くで放電が起こります。放電現象の中でも沿面放電と呼ばれるもので、プラスとマイナスのイオンが発生します。

空気中では水分子に囲まれて安定に存在

発生したプラスとマイナスのイオン(H⁺とO₂⁻)は、空気中では水分子に囲まれた状態で存在しています。この様子がブドウの房のようなので、「房」や「集団」を意味するクラスター(cluster)という言葉が使われています。

クラスターイオンができる理由

どうして水分子がイオンを取り囲むかと言うと、水分子には電荷に偏りがあるからです。水分子を構成していている水素原子と酸素原子は、電子を引き寄せる力に差があるため、水分子の中の電子は酸素原子側に偏って存在しています。

分子全体としては電荷はプラスマイナスゼロですが、酸素原子側が少しマイナスに、水素原子側が少しプラスに帯電しているのです。

そのため、イオンの持つ電荷に影響を受けた水分子がイオンの周りを取り囲むのです。

プラズマクラスターが作用するメカニズム

それでは実際にこの2つのイオン(H⁺とO₂⁻)がどのように働くのでしょうか。

実はH⁺とO₂⁻の形で作用するのではなく、そのイオンから生まれるOHラジカルという分子に変化して作用します。

それなら、はじめからOHラジカルの形で発生させればいいのでは?と思うかもしれません。しかし、OHラジカルというのは反応性が高いために寿命がとても短いのです。

そのため、空気中ではクラスターイオンとなって比較的安定でいられるH⁺とO₂⁻を放出し、細菌やウイルス、ニオイ物質の表面までたどり着いたところでタイミング良くOHラジカルに変化できたものが効果を発揮してくれるという作戦なのです。

OHラジカルの働き

OHラジカルというのはイオンではありません。電子の数に過不足はなく、電荷はプラスマイナスゼロです。

しかし電子の配置を考えると、あともう1つ電子を受け取った方が安定した形になれるのです。

そのため、OHラジカルは安定化するために電子を奪おうとする力が強く、カビ菌やウイルス、ニオイ物質の表面を構成している分子から水素原子ごと引き抜いてしまうことができるのです。

電子だけをもらうと、マイナスのイオンになってしまうので、いっしょに水素も連れて行くのです。OHラジカル自身は水素原子を受け取って水(H₂O)に戻ります。

こうした作用から、プラズマクラスターにはカビ菌を除菌したり、ウイルスの活動を抑えたり、ニオイ物質を分解する作用があるとシャープは主張しているのです。

OHラジカルが電子を奪う力が強い理由

電子の配置的に、電子をもう1つ受け取った方が安定すると書きましたが、おそらく「なんで?」って思ったと思います。

そういった人に向けて、少々長くなってしまうのですが、ここからはOHラジカルがもう1つ電子を受け取るほうが安定する理由をなるべく分かりやすく説明します。

電子と電子殻

物質を構成している原子は、原子核と電子から成ります。電子は原子核の周りを飛んでいて、電子殻と呼ばれる軌道に乗って動いていると考えます。

電子殻には大きさに応じていくつか種類があり、収容できる電子の数に違いがあります。

小さい順にK殻、L殻、M殻、N殻・・・(以下続く)と呼ばれていて、収容できる電子の数の上限は、それぞれ2個、8個、18個、32個・・・となっています。この数字に何か法則は見出せるでしょうか?

K殻を1番目として番号をつけると、n番目の殻に収容できる電子の数の上限は2n2と表すことができます。

水素と酸素の電子配置

原子番号が1の水素原子は、原子核の周りを電子が1つだけ回っている構造をしています。

一方で原子番号が8の酸素原子はK殻とL殻を持っていて、図のような電子配置になっています。原子番号の数字だけ電子が入っています。

原子番号がもっと増えていくと、電子の回る軌道が増えていき何重にも重なっていくのですが、化学反応を考える上では、一番外側の電子殻(最外殻と呼びます)が重要なんです。

最外殻が電子で満たされると安定する

最外殻がどんな風に化学反応に関係するかと言うと、最外殻を電子で満タンにするような化学結合が起こるのです。

水素原子では、最外殻はK殻なので、電子をもう1つ受け取って電子が2個入った状態を作ろうとします。

酸素原子はというと、最外殻はL殻なので、L殻に電子を8個入れることで安定します。あと2つ必要です。

ただし、ここで書いたことが成り立つのはK殻とL殻の場合です。M殻18個電子が入れますが、8個入るといったん安定してしまうのです。そこへ電子をもう1個入れるとしたら、M殻ではなく1つ大きいN殻に入るのです。こんな風に複雑な事情が絡んでくるので、上で書いたことはL殻までの話と思っておいてください。

安定化のために電子を共有

ここで考えているOHラジカルは、水素と酸素が構成元素なので、K殻とL殻が関係します。

最外殻を満たそうとすると書きましたが、単にそのまま電子だけを増やすと、電荷を帯びてイオン化してしまいます。しかし、他の原子と上手く電子を共有し合えば、イオン化することなく最外殻も満たせて安定化できるのです。

具体例として水分子を見てみると、酸素原子は2つの水素原子と電子を共有し合うことで最外殻に電子が8個入った状態を実現しています。水素原子もそれぞれの最外殻に電子が2個入った状態になっています。

OHラジカルは反応性が高い

上で示したOHラジカルの電子配置を見ると、酸素原子の最外殻に電子は7個入った状態になっています(1つは水素と共有)。最外殻であるL殻に電子がもう1つ入って8個になると安定するので、電子を奪う力が強い、つまり化学反応を起こしやすいのです。

ただ、その反応性の高さ故にOHラジカルというのはごく短い時間しか存在していられません。

そんなものが本当に最近やウイルスを抑制したりニオイ物質を分解できるのか疑問ですよね。

シャープによれば、プラズマクラスター発生装置から出てくるのはイオン状態のH⁺とO₂⁻で、これらが空気中を漂い、細菌やウイルス、ニオイ物質のそばまで来たときに偶然、OHラジカルに変化してくれれば効果が期待できるというもののようです。具体的にどれだけの数のOHラジカルが期待される効果に貢献しているのかについては不明です。

さいごに

プラズマクラスターに期待される効果というのは、反応性の高いOHラジカルが深く関係していたのです。

パナソニックでもナノイーという名前で同じくOHラジカルを応用した製品を開発しています。各社、発生のさせ方や寿命の持たせ方を工夫しているようです。