ステンレスに錆ができる原因は何?もらい錆のメカニズムを解説

キッチンのシンクに赤茶色の錆ができてしまったことはないですか?一度できてしまうと、普通の食器用洗剤ではなかなか落とせません。

完全に落とすにはサビ落とし専用の洗剤が必要になってきたりもするのです。できれば錆ができないように使いたいものです。

ここではステンレスに錆、特にもらい錆ができるメカニズムを解説していきます。

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ステンレスは錆びない?

ステイン(stain)はシミ、汚れといった意味で、ステンレス(stainless)という名前は、汚れがつかない=錆びないということが由来になっています。

ステンレスは、鉄にクロムやニッケルを混ぜた合金で、実際に腐食耐性があります。つまり錆びにくいということです。

でも表面は錆びている

実は、ステンレスの表面というのは酸素と結びついて薄い酸化皮膜をつくっていて、これも錆の一種なんです。でも、よくイメージされる赤くてボロボロと崩れる錆とは少し違います。

この酸化被膜は、金属表面を緻密に覆ってくれるので金属内部が空気から遮断されます。いったん酸化皮膜ができあがると、それ以上酸素と結びつくことがなくなり、錆が進むことがないのです。

ステンレスが錆びる原因

本来であれば錆びないはずのステンレスですが、それでも赤く汚れているのを見かけることがあります。それは一体何なのでしょうか。

他の金属の錆が付着している

これがいわゆる「もらい錆」になります。鉄くぎやヘアピン、缶詰の缶などを濡れた状態でステンレスの流し台に放置していたら、赤い錆の跡ができてしまった経験はないでしょうか。

これは、ステンレス自体が錆びているのではなく、置いていた金属の方が錆びているのです。そのため、もらい錆は何とかすれば落とすこともできるようです。

もらい錆のメカニズム

もらい錆の原因は、接触していた別の金属の錆が付いてたわけです。どういった原理で起こるのでしょうか。

ステンレスだけに限らず、異なる2種の金属が接触した状態で、さらにその間に水が存在すると、どちらか片方の金属が錆びるという現象が起こることがあります。

もらい錆が起きるかどうか、起きるならどちらの金属が錆びるかというのは、接触する2種の金属の種類によって決まります。具体的には「イオン化傾向」というものが関係しています。

イオン化傾向

原子が電子を受け取るか手放すかして、電気を帯びた状態のものをイオンと呼びます。このイオンになりやすさは元素の種類によって違っていて、イオン化傾向というのは主に金属元素についてイオンになりやすさを示したものです。

そして通常、金属は電子を受け取るのではなく、手放そうとする性質が強い元素です。

元素を、イオン化しやすい順(イオン化傾向が高い順)に並べたものをイオン化列といい、覚えやすいようにしたゴロ合わせが有名です。

K>Ca>Na>Mg>Al>Zn>Fe>Ni>Sn>Pb>H>Cu>Hg>Ag>Pt>Au
貸そうかな、まああてにすんな、ひどすぎる借金

高校時代の記憶が残っている人なら聞いたことがあると思います。

イオン化傾向の高い金属が錆びやすい

上のイオン化列で挙げた元素では、左にあるほどイオン化傾向が高い、つまり電子を放出してイオンになりやすい元素です。金属元素だと錆びやすさにつながります。

ステンレスのイオン化傾向はというと、上のイオン化列のCu(銅)あたりに相当します。

異なる2種の金属を接触させると

ステンレスの流し台の上に濡れた鉄くぎを置いておいた場合で考えましょう。

鉄が溶け出す

イオン化傾向の異なる2種の金属が水に浸かった状態で接触すると、イオン化傾向の大きい金属ではイオン化が促進されて陽イオン(プラスの電荷を持ったイオン)になろうとします。

イオンになると水に溶けることができるので、イオン化傾向の大きい方の金属は少しずつ陽イオンとなって水に溶けだします。鉄(Fe)は、ステンレスよりもイオン化傾向が大きいので、鉄くぎから陽イオン(Fe²⁺)が溶け出します。

\(Fe \rightarrow Fe^{2+}+2e^{-}\)

水と酸素が電子を受け取る

これと同時に、放出された電子がイオン化傾向の小さい金属(ここではステンレス)の方へ流れていき、そこから水が電子を受け取るような反応が起こります。水が酸性でないときには主に水分子と水中に溶け込んだ酸素分子が電子を受け取る反応が起こり、水酸化物イオン(OH⁻)ができます。

\(2H_{2}O+O_{2}+4e^{-}\rightarrow 4OH^{-}\)

水酸化物イオンは、マイナスの電荷を持つ陰イオンですが、鉄くぎから出る陽イオンはプラスの電荷を持っているので水全体では電気的に中性です。

鉄イオンは水中でさらに酸化

そして鉄の陽イオンは水中でさらに酸化され、最終的に水が乾いた後には、主にFe₂O₃で表される酸化鉄(Ⅲ)になって流し台の表面に残ります。よく見かける赤茶色の錆の正体です。

錆びるとは電子を失うこと

錆びるというのは、酸素と結びつくことというのは間違いではないのですが、より本質的には電子を失うことなんです。電子を失った結果、酸素とくっつくことが多いのです。

そのため、錆にはイオン化傾向が大きく関係してくるのです。

他に考えられるステンレスの錆の原因

もらい錆はステンレス自体が錆びている訳ではなかったですが、ステンレス自体が錆びてしまう場合もあります。

塩がついていた

塩は塩化ナトリウム(NaCl)のことですが、塩が水に溶けると水中では電離して、ナトリウムイオン(Na⁺)と塩化物イオン(Cl⁻)に分かれて存在します。

この塩化物イオン(Cl⁻)は、ステンレス表面の酸化皮膜を水に溶けやすい形にする作用があるので、酸化被膜がなくなったところが錆びやすくなります。

醤油など塩分を含むものがついたままにしておくのは良くないということです。

さいごに

新しいうちはピカピカできれいなステンレスシンクも、ついうっかり缶詰の缶を置きっぱなしにすると簡単にもらい錆ができてしまいます。

きれいなまま長く使うためにも、食器や調理器具以外の金属を置くときには注意しましょう。