トランスジェンダー女性(MtF)ってどんな人?私自身の経験について語ります

最近、LGBTやトランスジェンダーという言葉を耳にすることが多くなりました。意味ぐらいは何となく分かると言う人も増えてきているとは思います。トランスジェンダーというのはLGBTのTに当たる人のことです。

しかし身近にそういう人がいない限り、なかなかトランスジェンダーの実態についてまではよく知らないという人が多いと思います。

私自身は、男性として生まれ、現在は女性として暮らしているトランスジェンダー女性なのですが、少しでもトランスジェンダーについて知ってもらうために、私がこれまでに自身の性別とどう向き合ってきたかについて書いていこうと思います。

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トランスジェンダーの意味

英語で「横切って」、「越えて」という意味を持つ【trans】と、性別(社会的な性別)を意味する【gender】が元になって生まれた言葉です。生まれたときの性別から反対の性別へ変わって生きる人という意味です。

ちなみに、英語では肉体的な性別は【sex】と言い、社会的な性別(生活する上でどの性別として扱われるか)の【gender】とは区別されます。

トランスジェンダー女性とは何なのか

トランスジェンダーというのが性別を変えて生きる人という意味ですが、後ろに「女性」と付くと、男性から女性に変わった人を指します。トランスジェンダーの女性ということです。

そして「男から女」を英語で表すと【male to female】となるので、頭文字を取って【MtF】と呼んだりします。

反対に、トランスジェンダー男性というのは、女性から男性に変わった人のことで、【FtM】と言ったりします。

なぜ性別を変えようと思ったか

MtFが性別を変えるのは何も、女性トイレでイタズラをするためではありません。そんなことをするためにわざわざホルモン剤を投与したり、髪を伸ばしたりする訳がありません。

トランスジェンダーは何らかの性別の違和感を感じて性別を変えるのです。私もそうでした。

性別の違和感

私の場合でいうと、自分が男性として生まれ、体が男の体であることは分かっていても、女性として生まれたかった、男として成長するのが嫌でたまらないといった気持ちが小学校中学年あたりからありました。

しかし、そのころはまだ自分の中でも気持ちがはっきりとしていたわけでもなく、思春期には誰にでも似たような思いがあるのかもしれない、大きくなれば変わるかもしれないと考えて、誰にも打ち明けることはしませんでした。

高校生の頃には性別違和がより明確に

それでも高校生あたりでは、違和感がはっきりとしてきて他の男子とは明らかに何か違うという自覚はありました。彼女ができてしまったら相手に悪いと思ったりしていました。

それでも体が男だというのは分かっていたので、女性の服を着ても似合う訳がないと考えていて、女装をしたいとは思わなかったです。ただただ女性として生まれたかった、体が女であってほしかったという、悩んでも仕方のない悩みだったのです。

性同一性障害だという自覚

大学生になるまでは、インターネットが自由に使える環境がなかったこともあり、性同一性障害だという自覚はありませんでした。

なんとなく「性同一性障害」という言葉は知っていたものの、まさか自分がそれに該当するとは思わなかったし、考えたことがなかったです。受験勉強で忙しかったというのも理由だと思います。

というか学校生活が何一つ楽しくなかったので、勉強だけをすることで気を紛らわしていたのかもしれません。

そんな自分が性同一性障害を自覚したのは大学生になってインターネットが使えるようになってからでした。

ネットで自分と同じ悩みを抱える人がいることを知る

ネットで見つけた同じ悩みを抱える人たちがホルモン剤を使って少しでも体を女性らしく近づけようとしていることを知り、もっと早くこのことを知っていればと後悔しました。

しかし、ホルモンでどこまで変われるのか、本当に女性として見てもらえて上手くやっていけるのか、親や周りの人にはどう説明するのか、相当悩みました。ホルモン剤を使うと後戻りはできないからです。

それでも、男のままで生きるくらいなら死んでもいいと考えていたのと、一度きりの人生なので何もやらずに後悔するのはしたくないと思い、性別移行を決意しました。

女性モルモンで女性化

性別移行を考えるほとんどのMtFがホルモン治療を望みます。女性ホルモンを投与していくと、個人差は大きいですが肉付きが女性らしい丸みを帯びたり、体毛が生えにくくなったりします。ただ一度成長した骨格、声は変わりません。

若いうちから始めたほうが効果も大きいので、当事者の間ではもっと早く始めていればよかったといった声は本当に多いです。ただ、幼い頃の性別違和の大部分は成長とともに解消されるという学説もあるようで、幼いうちから性別移行を開始することはなかなか難しいというのが現状です。

錠剤と注射

女性ホルモンを投与する方法として、主に錠剤を飲むか、注射を打つかの2つがあります。

注射は医療機関でしか打てないので、性同一性障害の診断書をもらってからでないと注射は打てません。

私は性別移行を決意した段階から一刻も早くホルモン治療を始めたかったので、錠剤を購入して飲んでいました。しばらくしてからでしたがジェンダークリニックにも通い始め、診断書ももらいました。

女性として認知されるか

ホルモン摂取や脱毛、スキンケア、ボイストレーニングなどありとあらゆるいろんな努力を行っても、女性として認知されなければその先やっていけません。

「あの人はそういう人だから、見た目はどう見ても女に見えないけど、女として扱ってあげましょう」では当事者としてはちっとも嬉しくないのです。俗にいう「配慮パス」というやつです。

私の体験としては、性別移行を始めていくと、名前を見て不思議な顔をされたり、男性トイレを使い終わって出るときにすれ違った男性が慌てて引き返していったりということが起こるようになりました。

それでも鏡を見るたびに、やっぱり女性に見えないとよく悩みました。こんなので女性トイレに入ると通報されてしまうのではないかと考えていました。

親への説明

女性としてパスできるかどうかと同じか、それ以上に大きく立ちはだかった壁かもしれません。

親はやはり私に体の性別のまま男として生きることを望みました。ただそれは私にとっては自分が自分でないように思えて、一生そんな風に生きるのはできそうになかったです。

最終的には女として生きていくことを一応は認めてもらえた状態ですが、それでも近所の目は気になるようで、今でも実家には極力戻ってきてほしくはないそうです。

現在はほぼ完全に女性として通っている

性別適合手術は受けていないので戸籍の性別は男性ですが、改名はしており、人事の人を除いては職場でも女性として通っています。

トイレの使用について特に何か言われたことはないですが、女性用を使わせてもらっています。今さら男性用を使う方がいろいろ面倒なことになりそうです。

ただ、女性として受け入れられるかはやはりケースバイケースで、本人のパス度だけでなく、会社の風土によっても違ってくるので一概には言えないというのが現状です。

性別適合手術を受ければ全て問題なし?

性別適合手術を受けて手続きを踏めば、確かに法的には完全に女性になれます。女性トイレを使うことについて、法的にも全くなんの問題もなくなります。

しかし、人が日常生活の中で他人の性別をどうやって判断しているかというと、性器を確認したりするわけではなく、見た目であったり声、しゃべり方などで判別しているのです。

結局のところ、波風立てずに女性の中に同化するには、性別適合手術を受けていることに越したことはないですが、見た目や声の方がずっと重要になってくるのです。

MtFのトイレ問題

シス女性(生まれたときから女性)の中には、手術を受けていないMtFが女性トイレを使うことが怖いと思う方もいると思います。トランスジェンダーに対する理解が進めば捉え方も変わっていくかもしれないですが、現時点で怖いと思うものが怖いのは仕方のないことです。

個人的には、シス女性のそういう気持ちを無視してまで未手術のMtFが女性トイレを使って良いものなのか疑問に思うことはあります。

それでも、これだけは知っておいていてほしいことがあって、女性トイレに入ってニュースになるような女装おじさんとMtFというのは、やっていることに近いものがあったとしても、全く性質や目的が異なるということだけは知っておいてもらいたいです。

さいごに

私は現在、女性と生活しており、性別移行を進める中でいろいろ苦労もありましたが、女性として暮らせるように慣れて本当に良かったと思っています。戸籍の性別を知りながらも受け入れてくれている人には感謝の気持ちでいっぱいです。