消費電力はなぜ電流と電圧をかけて計算できるのか

電流や電圧という言葉を耳にすることはあっても、なんとなくでしか意味が分からなかったり、オームの法則で習ったけれど忘れてしまったという人も多いと思います。

そして電気代を計算するときにも関係する消費電力というのは、もともとは電流と電圧をかけて出てくるものなのですが、ここではその理由について解説していきます。

コンテンツの転載は固くお断りいたします。

簡単に消費電力とは

電流が流れることで1秒間で消費されるエネルギーのことです。家電なら、それが多いほど電気代がかかるということです。詳しくは以下の記事をご覧ください。

Wh(ワットアワー)の意味を解説!電力量と消費電力の違いとは

電流が流れるとは

まず、電流というのは電気の流れのことであり、通常は電子が導線などの金属の中を流れるという現象のことを指します。導線で電池と豆電球をつなぐと、電池のマイナス極から電子が出て、豆電球を通り、プラス極に入っていくという流れが起こります。

電流の向きが電子の流れる向きと反対なのは、まだよく分かっていなかった時代に定義されてしまった名残なのです。今さら定義し直すとなるといろいろ不都合が起こるのでしょう。

電子の流れはすごく遅い

電子が導線を流れる速度は1秒間に数ミリ程度というものです。スイッチを入れてすぐに反応が出るのは、回路中の電子が一斉に動き出すからです。

導線の中には電子がたくさんいて、それらがみんないっしょに動いているので、導線の端から電子が入ると反対側の端にいた電子が出ていく(電球に入っていく)ということが絶えず繰り返されています。

加えて、流れている電子は常に同じ速度で流れているのではなく、導線を構成している原子に衝突しては再び流れ始めるというのを繰り返しながら進んでいきます。

障害物に邪魔をされながらも電子が流れていくためには電圧が必要なのです。

電圧とは

ものすごく簡単に言うと、電荷(電気の集まり)はエネルギーの高いところから低いところに流れていこうとするのですが、この電荷にとってのエネルギー(正確には電位、ポテンシャルエネルギーと言います)を、ある2点間で比較したときの差分のことを電圧と言います。電位差と言ったりもします。

電圧が大きいほど、エネルギーの差が大きいということなので、電荷をエネルギーの低いところに流そうという力がより強く働きます。つまり大きな電流が流れるということですね。

といっても、なんのことを言っているかさっぱりですよね。上の説明を読んですぐに意味が分かる人にとってはこの記事はあまり役に立たないかもしれません。

電圧がどういうものかちゃんと説明しようとすると少々長くなってしまうのですが、なるべく誰にでも分かるように解説していきます。まずはエネルギーがどういうものか説明していきます。

電気のエネルギー

当然ですが電化製品は全て電気が流れないと動きません。電流を流すことで動力源である電気エネルギーを供給すると動くのです。

電気エネルギーを与えられて何か機能するということは、電気エネルギーを何か別の形のエネルギーに変換しているということでもあります。

電球

フィラメントに電流が流れることで高温になり発光することを利用した電球は、電気エネルギーを光のエネルギー(厳密には熱エネルギー?)に変換していると言えます。

モーター

電流を流すとコイルが磁石との間で相互作用を受けて回転することで動作するモーターは、電気エネルギーを運動エネルギーに変換していると言えます。

変換して使っていることは分かっても、エネルギーそのものというものは実体が見えず、いまいち何なのかピンと来ませんね。エネルギーとはいったい何なのでしょうか。

そもそもエネルギーとは

エネルギーには、電気エネルギーや熱エネルギーなどいろんな形はありますが、上手く仕組みを作ってやればエネルギーで物を動かすことができます。

エネルギーは仕事で定義される

力を加えて物を動かすことを物理では「仕事」と呼ぶのですが、この仕事をするのに必要な能力のことをエネルギーといいます。エネルギーが多いほど、大きな仕事ができます。

そして、エネルギーはJ(ジュール)という単位で量を表します。1Jは、物体を1N(ニュートン)の力の大きさを保ったまま1mの距離だけ移動させるという仕事をするのに必要なエネルギーと定義されています。100gのリンゴを重力に逆らって1m持ち上げるのに必要なエネルギーの量がだいたい1Jです。

仕事は力×移動距離で表す

エネルギーは、どれだけの仕事ができるかで量を表す訳です。その仕事を物理ではどう考えるかと言うと、物体に加える力をF[N]、力によって移動した距離をd[m]したときの力がした仕事W[J]は

\( W = F\times d\cdots\cdots① \)

と表すことができるのです。

大事なのは、仕事で消費されるエネルギーは力の大きさ×移動距離で表されるということです。後で使うので①としておきます。

電気の話をしていたのに、いきなり話が飛んだように思うかも知れませんが、電気エネルギーであっても、物を動かすためのエネルギーとして換算することで量をジュールで表すことができます。

回路中を流れる電子も何らかの力を受けて動いているはずだから、その力がする仕事を計算してやろうというのがここから先の内容です。

電子は力を受けて動いている

プラスの電気とマイナスの電気は引き合って、同種の電気はお互い遠ざけ合うという現象は、静電気の実験などでよく耳にしたことがあると思います。電気の間には力が働くのです。

働く力の強さは電気の量(電荷と言います)によって変わってしまうので、比較しやすいように基準となる1C(クーロン)という電荷(電気量)が受ける力の大きさで電気の間に働く力を表現します。

電場

ある場所に1Cの電荷を置いてみて、その電荷にF[N]の大きさの力が働くとき、その場所にはF[N/C]の電場が発生していると言います。電場の単位であるN/Cは、1Cあたりの力の大きさということです。

回路中の電子は、電源に存在する電荷との間で生じる力を受けて流れています。つまり、電源が作り出す電場から力を受けているのです。

回路中の電場

電場が強く現れるのは、豆電球やモーターといった、電子が流れるのに力が必要となるところです。電子が流れるのに力が必要となるところを単に抵抗と呼び、resistanceの頭文字を取って記号Rで表します。

抵抗中では電場が存在しますが、導線中では電場はほとんど存在しません。

導線というのは抵抗が小さく、動ける電子がたくさんいるため、導線の端にたくさんの電子が集まります。すると、集まった電子たちが作りだす電場と電源が作る電場が打ち消し合ってしまい、導線内部では実質的には電場がほぼ0の状態になります。

電子1個に働く力

電子1個が持つ電気量、つまり電荷をe[C]とすると、F[N/C]の電場ができているところに電子を置くと、その電子が受ける力の大きさはというと、

\( F\times e [N]\cdots\cdots② \)

で表されます。

F[N/C]というのが1Cあたりで考えていたものですから、e[C]の電荷を持つ電子1個に働く力はというと、e倍になっているということです。

回路で消費されるエネルギー

抵抗の中で電場が一様とし、抵抗の長さがd[m]とします。この抵抗に電子1個を流す状況を考えます。

電子1個に働く力は②よりF×e[N]です。この力によって電子はd[m]移動するので、このときに電場がする仕事で消費されるエネルギーは、①をもとに

\( F\times e\times d  [J]\)

となります。

先ほども言った、導線には電場がほとんど存在しない(というのは、言い換えると導線は電子を流すのにほとんどエネルギーがいらないということでもあります。

そのため、上に書いたような回路の場合だと、回路に電子1個を流すのに必要なエネルギー、つまり電子1個を流すことで回路で消費されるエネルギーは、抵抗で消費されるエネルギーに等しく

\( F\times e\times d  [J]\cdots\cdots③\)

ということができます。

電流は単位時間あたりの電荷の流れ

ここまでは電子1個で考えましたが、実際の電流を担っている電子というのはものすごい数になります。もし、電子がたくさんいてq[C]の電荷を流したとしたら、消費されるエネルギーは

\( F\times q\times d  [J]\)

になります。

でも、このq[C]をゆっくり流したのか素速く流したのかでは回路に与える効果が違ってきます。そこで電流というものが必要になります。

電子の数で表現しても良いかもしれませんが、電流というものは電荷を使って表現されます。電流は、その場所を1秒間に何Cの電荷が通過したかで表します。

電流の単位はA(アンペア)またはC/s(クーロン毎秒)です。川の水が秒間何リットル流れるかというのと良く似ています。sはセカンドと読み、秒の単位です。

5C流れましたと言っても、電子が早く流れるか遅く流れるかで回路に与える効果が違ってくるので、1秒間あたりという時間の概念も加えるのです。

消費電力は単位時間あたりのエネルギー消費

先ほどの回路でq[C]の電荷をt秒かけて流したときに回路で消費されるエネルギーについて考えてみます。t秒の間で消費されるエネルギー、すなわち電力量は

\( F\times q\times d  [J]\)

に変わりはないですが、1秒間あたりではtで割るので、

\( F\times \frac{q}{t}\times d  [J/s]\)

になります。単位がジュール毎秒になっています。

そしてq/tは電流を表すので、回路に流れる電流をI[A]と置き直すと(1ではなくI)、1秒間当たりに消費される電力量、すなわち消費電力は

\( F\times I\times d  [J/s]\cdots\cdots④\)

と表せます。

電圧について説明

上で書いた式中には電場Fが含まれています。しかし、実際の回路中で電場自体を測定することは難しく、また抵抗の種類によっても違ってきてしまうものなのです。

ところが、電流を流すことで回路全体で消費されるエネルギーというのは、どれだけの電荷が流れたかと電源の性能が分かれば求められるのです。抵抗によって変わってしまう電場Fをわざわざ知らなくても表現できるということです。

抵抗の大きさを変えると何が変わるかというと、1Cを流し終えるまでにかかる時間が変わります。でも、1C全てを流して消費されるエネルギーというのは変わらないのです。

電圧は1Cの電荷を流して消費されるエネルギー

上の回路で電池の+極から−極まで1Cの電荷が流れると、つなぐ抵抗の種類によらず、決まったエネルギーが消費されます。これをU[J]とおきましょう。

こうしておけば、回路にq[C]の電荷が流れたときに消費されるエネルギーは、1Cの場合のq倍になるので

\( U\times q [J]\)

と書けます。実はこのUというのが電池の電圧にあたります。電圧の単位はV(ボルト)、もしくは1Cあたりに消費されるエネルギーということでJ/Cです。

電圧は2点間を移動するのに必要なエネルギー

ある点から別のある点まで電荷1Cが移動したときに消費されるエネルギーを「その区間における電圧」と言います。1Cの電荷の移動で、1Jのエネルギーを消費されるような2点があるとき、その2点間の電圧は1V(ボルト)であると言います。

上で出てきた式中のF×dが電圧に相当するので、F×dを電圧の表すときによく使われるV[V]で置き換えると(単位も同じ記号ボルトを使います)、④式の消費電力F×d×I[J/s]は

\( I\times V  [J/s]\)

という、消費電力が電流かける電圧で表される形になります。

電圧は電位差とも言う

電池のプラス極とマイナス極という2点間において、それぞれの地点に固有のエネルギーの高さなるものを考えたとき、プラス極とマイナス極の間ではそのエネルギーの高さにV[J]だけ差があると考えるのです。地点に固有のエネルギーの高さのことを電位と言い、ある2点間の電位の差のことを電圧といいます。あくまで電荷1Cを基準にして定義されます。

そしてその2点間を移動する電荷は、差分のエネルギーを受け取ると同時に、それが回路で消費されるのです。この場合、ただの抵抗なので熱となって外に出ていきます。

電圧というのはなかなかイメージしづらい概念ですが、1Cという量の電気を移動させるときに、その電荷がどれだけのエネルギーを受け取るかを表すものなのです。いちいち電場やクーロン力から考える手間が省ける便利な概念なのです。