仕事と線積分【電磁気学を分かりやすく解説】

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電場における仕事

電場によって電荷が移動すると、電場はその電荷に対して仕事をしたことになります。電場中のある点Aから点Bへ電荷𝑞を移動させる場合に電場がする仕事というのはどのように表せるでしょうか。点Aから点Bに向かう経路はいろいろ考えられるので、𝐶₁という経路を通って点Aから点Bに向かう場合の仕事を𝑊₁とすると、𝑊₁は電荷に働く力、すなわち電場を経路𝐶₁に沿って線積分したものになります。

\(\begin{align}W_1 = \int_{C_1}q\boldsymbol E \cdot d\boldsymbol r\end{align}\)

これは何をしているかというと、経路𝐶₁を細かく区切ってできる微小区間を考えて、その微小区間における仕事を経路全体に渡って足し合わせていることになります。𝑞𝐸(r)∙drが微小領域での仕事になっていることを説明します。

ベクトル場の線積分とは

経路𝐶₁というのは一般的には曲線です。その曲線がr(t)=(𝑥(t),𝑦(t),𝑧(t))と媒介変数tを用いて表されたとしましょう。tの値を決めると空間上の点が定まり、そのtの値を変えていくと対応する点の集まりが曲線をつくります。曲線上の点r(t)からtを∆tだけ動かした点r(t+∆t)に向かうベクトルを、tの変化量∆tで割ったベクトルを考えます。

\(\dfrac{\boldsymbol r(t+∆t)-\boldsymbol r(t)}{∆t}=\Big(\dfrac{x(t+∆t)-x(t)}{∆t}\;,\;\dfrac{y(t+∆t)-y(t)}{∆t}\;,\;\dfrac{z(t+∆t)-z(t)}{∆t}\Big)\)

このベクトルの方向はr(t)からr(t+∆t)に向かう方向です。ここで∆tを限りなく0に近づけると、r(t)とr(t+∆t)は限りなく近づくことになり、両辺は微分で表せることになります。drというのはr(t+∆t)-r(t)のことです。

\(\dfrac{d\boldsymbol r}{dt}=\Big(\dfrac{dx}{dt}\;,\;\dfrac{dy}{dt}\;,\;\dfrac{dz}{dt}\Big)\)

このベクトルは、曲線の接線方向を表すベクトルになっています。この式より、曲線上の微小区間を表すベクトルdr

\(d\boldsymbol r=\Big(\dfrac{dx}{dt}\;,\;\dfrac{dy}{dt}\;,\;\dfrac{dz}{dt}\Big)dt\)

と表すことができます。右辺にdtを残しておくのは、(d𝑥,d𝑦,d𝑧)だけになってしまうと曲線の形が分からなくなってしまうので、曲線上の点r=(𝑥,𝑦,𝑧)がtによって変化するということが見える形にしておくのです。

drというのは、dr/dtと同様に曲線の接線方向を向いていおり、大きさが微小区間の長さになっています。そのため、ベクトル場とdrの内積を取ると、ベクトル場のdr方向の大きさとdrの大きさ、つまり微小区間の長さを掛けた値が出てくることになります。つまり上で出てきた𝑞𝐸(r)∙drは微小区間における仕事を表すことになるのです。

もし、ここで考えているように積分経路がr(t)=(𝑥(t),𝑦(t),𝑧(t))と媒介変数tで表現されていた場合、ベクトル場の各成分もtだけで表現することで線積分がただのtについての積分になります。上の電場の線積分についても、積分経路の始点がr(tA)、終点がr(tB)とすると、上で考えていた𝑊₁というのは

\(\begin{align}W_1 &= \int_{C_1}q\boldsymbol E \cdot d\boldsymbol r\\&=\int_{t_A}^{t_B}q\Big(E_x(t)\;,\;E_y(t)\;,\;E_z(t)\Big) \cdot \Big(\dfrac{dx}{dt}\;,\;\dfrac{dy}{dt}\;,\;\dfrac{dz}{dt}\Big)dt\end{align}\)

と書けることになります。

保存力

線積分について説明できたので、次に点Aから点Bに向かうのに別の経路𝐶₂を通った場合の仕事を𝑊₂として、𝑊₁と𝑊₂の差𝑊₁−𝑊₂を考えてみます。

\(\begin{align}W_1-W_2 &= \int_{A\;C_1}^Bq\boldsymbol E \cdot d\boldsymbol r-\int_{A\;C_2}^Bq\boldsymbol E \cdot d\boldsymbol r\\&=\int_{A\;C_1}^Bq\boldsymbol E \cdot d\boldsymbol r+\int_{B\;C_2}^Aq\boldsymbol E \cdot d\boldsymbol r\\&=\oint_{C_1+C_2}q\boldsymbol E \cdot d\boldsymbol r\end{align}\)

経路𝐶₂を点Aから点Bに向かう仕事を引くということは、経路𝐶₂を点Bから点Aへ逆にたどる場合の仕事足すことと同じです。上の式というのは結局、点Aを出発して経路𝐶₁を通って点Bに行き、そこから経路𝐶₂を通って点Aに戻ってくるという閉曲線について線積分することになります。

一般には、この閉路積分は0になるとは限りません。つまり、始点と終点は同じでも経路が違えば線積分の値が変わるということです。しかし、静電場の場合では任意の閉曲線について閉路積分が0になります。これは静電場の性質の1つ、静電場におけるマクスウェル方程式のrot 𝐸 = 0の言い換えでもあります。

結局このことから、上の𝑊₁−𝑊₂は0、つまり𝑊₁と𝑊₂は等しいということが言えます。点Aから点Bに向かって電荷を移動させる仕事は経路に依存しないということです。このように、力の場における仕事が始点と終点の位置だけで決まるとき(任意の閉曲線における線積分が0になることと同値)、その力は保存力であると言います。