rot(回転)の意味【電磁気学を分かりやすく解説】

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rotとは

A(r)というベクトル場があったときに、rot Aというのは、位置rおけるAの回転を表します。rotというのはrotationの略です。rotではなく、curlが記号として用いられることもあります。

A(r)の𝑥,𝑦,𝑧成分がそれぞれA𝑥(r) , A𝑦(r) , A𝑧(r)と書けるとき、rot Aというのは次のようなベクトルを表します。

\(rot\:\boldsymbol A=\begin{pmatrix}\dfrac{\partial A_z}{\partial y}-\dfrac{\partial A_y}{\partial z}\\[5px]\dfrac{\partial A_x}{\partial z}-\dfrac{\partial A_z}{\partial x}\\[5px]\dfrac{\partial A_y}{\partial x}-\dfrac{\partial A_x}{\partial y}\end{pmatrix}\)

どうしてこんな計算が回転を表すのかについては後で説明します。

直感的イメージ

ベクトル場というのは、位置ごとに決まったベクトルが紐付けられている空間のことですが、その中でベクトルが渦をつくっていることがあります。ベクトル場を水流や風の流れに見立て、その中に水車を置いたとすると、渦ができているところでは水車が回転することになります。回転というのは、その場所での水車の回り具合を表すようなものと例えることができます。

そして同じ地点に置いた水車でも、回転軸の向いている方向によって回り方は異なります。そのため、回転の強さだけでなく回転軸がどの方向を向いているかも考える必要があるのです。rot Aというのは、上の式を見ても分かる通りベクトルなので方向を持っており、その向きに風車の回転軸を合わせると水車の回転が最大になるというものです。もし、別の方向に風車の軸を向けると、rot Aのうちのその方向の成分が水車の回り方に現れます。一言で言うならrot Aというのは、その場所に存在する軸の向きが異なるいろんな回転をベクトル的に合成しているものと言えるでしょう。

回転をどう表現するか

上で書いた回転の定義では、偏微分をするだけなので計算自体はシンプルです。しかし直感的なイメージとは程遠いものです。実はこれとは別の定義が回転にはあって、こちらの方が直感的なイメージは湧きやすいでしょう。その定義とは次のようなものです。

\(\begin{align}rot\:\boldsymbol A\cdot \boldsymbol n=\lim_{S \rightarrow 0}\Big(\dfrac{1}{S}\int_{C}\boldsymbol A \cdot d\boldsymbol r\Big)\;\;\cdots\cdots✽\end{align}\)

nは単位ベクトルで長さは1です。この式の左辺では、rot Anの内積を取ることで、rot Aのうちのn方向の成分が出てきています。右辺では、nに垂直な面内に閉路を考えて、それに沿ってAを線積分したものを閉路が囲む面積Sで割った値の、閉路を無限に小さくしていったときの極限値を表しています。閉路に沿って周回積分したものを循環と呼ぶのですが、ある面内における無限に小さな閉路での単位面積あたりのAの循環は、その面に垂直な単位ベクトルnとrot Aの内積に等しいと言っているのです。

閉路に沿って周回積分したもの、つまり循環が何を表すかと言うと、その閉路上でのベクトル場の渦を表します。渦があるところに置かれた水車は回ることになりますし、渦がない(=周回積分が0)ところでは水車は回りません。回らないというのは、風車を右に回そうとする力と左に回そうとする力が釣り合っていることになります。

そしてもう1つ説明しておかないといけないことがあります。回転というものを表すには、そこでの循環が右回りか左回りなのかも示す必要があります。右回りなのか左回りなのかは見る方向で変わるので、循環の渦が右回りに見える方向から眺めたときに、その回転面を垂直に貫いて奥へ進んでいく向きを、その回転の軸の向き決めておくのです。

なんで面積で割るのかは別にして、こちらの定義というのは上で説明した直感的なイメージとよく合いますよね。こちらの定義が先にあって、そこから冒頭で紹介した定義が導かれたと考える方が自然だと思います。

rot Aが回転を表す理由

𝑥-𝑦-𝑧座標空間に広がるベクトル場Aの点(𝑥,𝑦,𝑧)における回転を考えます。一般に回転というのは、いろんな軸の方向の回転が混ざっています。そんな回転を表現するには、3次元の空間なので異なる3方向の成分を調べれば回転をベクトルとして表現できますね。そこで計算にも便利になるように、直行する𝑥,𝑦,𝑧座標軸の方向における成分を調べることにしましょう。

𝑧軸方向の回転、つまり𝑥-𝑦平面に平行な面内の回転を考えてみましょう。ここから説明することは𝑥軸方向の回転、𝑦軸方向の回転についても同様のことが成り立ちます。

𝑥-𝑦平面に平行な面(𝑧=𝑧の平面)内において、図のように点(𝑥,𝑦,𝑧)を中心とする微小な四角形の閉路C𝑥𝑦を考えます。𝑧軸の正の方向(画面において奥から手前に向かう向き)が軸の向きになるように回る向きを閉路C𝑥𝑦上での正の方向とします。つまり、図では左に回る向きを正として閉路に沿ってベクトル場Aを線積分することになります。そして図のように閉路の辺に①〜④の番号をつけておきます。

辺①、③は𝑥軸に平行なので、辺①、③についてAを線積分する際に必要になるのはAの𝑥成分です。辺②、④についての線積分ではAの𝑦成分が必要です。本来であれば1つの辺の中でも場所によってそれらの値は変化しますが、先ほども言ったように閉路が十分小さいのでその変化は無視します。すると、閉路C𝑥𝑦について1周積分するというのは、

\(\begin{align}\int_{C_{xy}}\boldsymbol A \cdot d\boldsymbol r&=A_x(x\:,\:y-\frac{∆y}{2}\:,\:z)∆x+A_y(x+\frac{∆x}{2}\:,\:y\:,\:z)∆y\\&\hspace{150px}-A_x(x\:,\:y+\frac{∆y}{2}\:,\:z)∆x-A_y(x-\frac{∆x}{2}\:,\:y\:,\:z)∆y\end{align}\)

と書けることになります。各辺の中点におけるAの成分を使っています。辺③、④についての線積分では、経路の方向がAの𝑥成分、Aの𝑦成分の正の向きと逆なのでマイナスが付くことに注意してください。

そしてここからさらに近似を行います。閉路が十分小さいので、辺①のちょうど真ん中の位置でのAの𝑥成分は、点(𝑥,𝑦,𝑧)での情報を使って次のような1次近似で表せるでしょう。

\(A_x(x\:,\:y-\frac{∆y}{2}\:,\:z)≒A_x(x,y,z)-\dfrac{\partial A_x(x,y,z)}{\partial y}\dfrac{∆y}{2}\)

これは何をしているかというと、座標が𝑥から𝑥-∆𝑥/2に変わる中でA𝑥は直線的に変化するとみなして、その傾きに-∆𝑥/2を掛けることでその変化幅を求めているのです。テイラー展開の1次の項までを考慮していることになります。同様に辺②〜④の中点においても

\(②\:\::\:\:A_y(x+\frac{∆x}{2}\:,\:y\:,\:z)≒A_y(x,y,z)+\dfrac{\partial A_y(x,y,z)}{\partial x}\dfrac{∆x}{2}\\③\:\::\:\:A_x(x\:,\:y+\frac{∆y}{2}\:,\:z)≒A_x(x,y,z)+\dfrac{\partial A_x(x,y,z)}{\partial y}\dfrac{∆y}{2}\\④\:\::\:\:A_y(x-\frac{∆x}{2}\:,\:y\:,\:z)≒A_y(x,y,z)-\dfrac{\partial A_y(x,y,z)}{\partial x}\dfrac{∆x}{2}\)

と表せます。これを先ほどの式に代入して少し整理すれば、

\(\begin{align}\int_{C_{xy}}\boldsymbol A \cdot d\boldsymbol r&=-\dfrac{\partial A_x(x,y,z)}{\partial y}\dfrac{∆y}{2}∆x+\dfrac{\partial A_y(x,y,z)}{\partial x}\dfrac{∆x}{2}∆y\\&\hspace{150px}+\dfrac{\partial A_x(x,y,z)}{\partial y}\dfrac{∆y}{2}∆x-\dfrac{\partial A_y(x,y,z)}{\partial x}\dfrac{∆x}{2}∆y\\[40px]&=\Big(\dfrac{\partial A_x(x,y,z)}{\partial y}-\dfrac{\partial A_x(x,y,z)}{\partial y}\Big)∆x∆y\end{align}\)

となります。すると、式✽より点(𝑥,𝑦,𝑧)でのrot Aの𝑧成分は

\(\begin{align}rot\:\boldsymbol A\cdot \boldsymbol e_z&=\lim_{S \rightarrow 0}\Big(\dfrac{1}{S}\int_{C_{xy}}\boldsymbol A \cdot d\boldsymbol r\Big)\\[10px]&=\dfrac{\partial A_x(x,y,z)}{\partial y}-\dfrac{\partial A_x(x,y,z)}{\partial y}\end{align}\)

となります。e𝑧は𝑧方向の単位ベクトル、Sは閉路C𝑥𝑦が囲む面積∆𝑥∆𝑦のことです。同様にして点(𝑥,𝑦,𝑧)でのrot Aの𝑥成分、𝑦成分を計算すれば、冒頭で紹介した式が出てきます。

実用的には式✽をそのまま使うことはほとんどなく、ベクトル場の形さえ分かればすぐに計算ができる偏微分で表した式のほうが断然便利なのです。

演算子∇

偏微分作用素を次のように成分に持たせたベクトルを定義し、Aに外積的に作用させると

\(\nabla:=\begin{pmatrix}\dfrac{\partial}{\partial x}\\[5px]\dfrac{\partial}{\partial y}\\[5px]\dfrac{\partial}{\partial z}\end{pmatrix}\)
\(\begin{align}\nabla\times\boldsymbol A&=\begin{pmatrix}\dfrac{\partial}{\partial x}\\[5px]\dfrac{\partial}{\partial y}\\[5px]\dfrac{\partial}{\partial z}\end{pmatrix}\times\begin{pmatrix}A_x\\[5px]A_y\\[5px]A_z\end{pmatrix}\\[5px]&=\begin{pmatrix}\dfrac{\partial A_z}{\partial y}-\dfrac{\partial A_y}{\partial z}\\[5px]\dfrac{\partial A_x}{\partial z}-\dfrac{\partial A_z}{\partial x}\\[5px]\dfrac{\partial A_y}{\partial x}-\dfrac{\partial A_x}{\partial y}\end{pmatrix}\\[5px]&=rot\:\boldsymbol A\end{align}\)

となり、rotの計算と同じ結果になります。∇はナブラと読み、偏微分作用素を成分に持つ演算子です。rotは∇を外積的に作用させるものですが、∇をベクトルに内積的に作用させるとdiv(ダイバージェンス、発散)を計算することを表します。また、スカラー関数に作用させればgrad(グラジエント、勾配)を表します。