日本語で『私は』や『彼らは』のような人称代名詞の主格の表現をするとき、スペイン語ではどういう風な使い方をし、どんな文の形になるのかを簡単にご紹介していきます。
※カナ発音は実際の発音に可能な限り近いものを表記していますが、あくまでも補助的なものです。実際の発音は発音記号やそれぞれの言語のルールに従ってください。
また、ここに書かれた発音記号は単語に1対1で対応させたものなので、2つの単語が組み合わさることで(リエゾンなど)発音がやや変化するものもあります。
コンテンツの転載は固くお断りいたします。
一般動詞に続く基本的なもの
英語には『I(私は)』や『He(彼は)』といった人称代名詞の主格があります。それらはスペイン語にもありますが、場合によって、同じ『I(私は)』であっても形が変化することがあります。
まずは、一般動詞に続く場合のものをザックリと見てみましょう。以下の2つの表のうち、最初は単数のものを、2つ目は複数のものを紹介しています。
日本語 | スペイン語 | 英語 |
---|---|---|
私は | yo | I |
あなたは | tú | you |
貴方は | usted | you |
彼は | él | he |
彼女は | ella | she |
日本語 | スペイン語 | 英語 |
---|---|---|
私達は | nosotros | we |
私達は | nosotras | we |
あなた達は | vosotros | you |
あなた達は | vosotras | you |
あなた方は | ustedes | you |
彼らは | ellos | they |
彼女らは | ellas | they |
ほとんどの場合、省略される
上の表で主格をまとめましたが、これらが文章や会話で使用されることはほとんどありません。大抵は省略されます。
(Yo) Vivo en Japón.
(I live in Japan.)
((私は)日本に住んでいます。)
上の例文のように、英語だと『I』を省略することは出来ませんが、スペイン語の場合は『私は』に相当する『Yo』は省略することがほとんどです。
ではなぜ、省略しても構わないのでしょうか。まずは、以下の例文を見てみましょう。
(Yo) Vivo en Japón.
(Él) Vive en Italia.
(Ellos) Viven en el Reino Unido.
日本語訳は上から順に下のようになります。
私は日本に住んでいる。
彼は(彼女は)イタリアに住んでいる。
彼らは(彼女らは)イギリスに住んでいる。
色々と主語を省略しがちな日本語であっても、上の例文の『彼は』や『彼らは』を省くと、主語が何なのか分からなくなってしまいますが、スペイン語であれば省略しても意味が通じるものが多いです。
文から主語となる人称代名詞が何であるかは、その文の述語動詞を見れば分かります。
動詞の変化
さて、もう一度、述語動詞に注目して文を見てみましょう。青線の部分が述語動詞です。
(Yo) Vivo en Japón.
(Él) Vive en Italia.
(Ellos) Viven en el Reino Unido.
述語動詞が主語にくるものに応じて変化していますね。『住む』という動詞の原型は『vivir』で、主語が『Yo』の時は『vivo』、『El』か『Ella』の時は『vive』、『Ellos』か『Ellas』のときは『viven』に形が変化します。
主語の人称に応じて動詞の形が変わるため、述語動詞を見れば主語の人称が分かるようになっています。なので主語を省略しても意味が伝わることが多いのです。
tú と usted の違い
tú と usted はどちらも二人称で『あなたは』を意味する人称代名詞の主格です。
違いは、tú は家族や友達といった親しい相手に使用する『あなたは』で、usted は初対面や目上、年上の相手に使用する『貴方は』です。
nosotros と nosotras の違い
nosotros も nosotras も『私達は』という人称代名詞の主格です。
違いは、もし、その『私達』に含まれる人達が全員女性であれば『nosotras』を使用し、それ以外の時は『nosotros』を使います。
例えば、『私達』に含まれるのが全員男性の時、または、男性と女性の両方がいたならば『nosotros』が使われます。
vosotros と vosotras と ustedes の違い
これらはどれも『あなた達』といった風な意味になります。
英語で『you』は、相手が1人だろうと複数人だろうと『you』を使いますが、スペイン語では相手が1人の時は『tú』などを使い、話し相手が複数人の時は『vosotros』などを使い分けます。
vosotros と vosotras は、tú の時と同じように親しい間柄で使い、ustedes は usted のように初対面や目上、年上の相手に使用するものです。
また、ustedes の時は相手の性別の区別はしないので、相手が男性のみであっても、女性のみであっても ustedes を使います。
vosotros と vosotras の違いは、nosotros と nosotras の違いと同じです。相手が全員女性なら vosotras 、それ以外の場合なら vosotros を使います。
ellos と ellas の違い
ellos と ellas はどちらも英語の『they(彼ら)』と同じ意味ですが、相手が女性のみであれば ellas 、それ以外であれば ellos を使います。
nosotros や nosotras の時と同じですね。
一般動詞に続かない表現・『〜は〜だ』
日本語で『〜は〜だ』や『〜は〜である』など、主語が一般動詞に続かない時、英語でいう『I am ~』『You are ~』のように主語が be動詞に繋がる表現をする場合、スペイン語では、一般動詞に続く場合とは違う表現をします。例えば以下のような文について考えてみましょう。
Soy de Japón.
(I am from Japan.)
(私は日本の出身です。)
『Soy』は『私は〜です』や『I am』を意味する単語で、どちらかと言えば be動詞的な使い方をします(活用で主語を判別しやすいため)。
ser と estar
『Soy』は『私は〜』のときの形で、原型は『ser』です。そして、soy とは別にもう1つ、『私は〜です』を表現する時に使える『estoy』もあります(原型は estar)。
soy も estoy も意味としては『私は〜です』となりますが、どう使い分けるのかを解説していきます。まずは ser と estar の活用の一覧を見てみましょう。(三人称には、彼は、彼女は、それは、などが含まれます)
ser | estar | |
---|---|---|
私は | soy | estoy |
あなたは | eres | estás |
三人称単数 | es | está |
私達は | somos | estamos |
あなた達は | sois | estáis |
三人称複数 | son | están |
ser と estar の使い分け
ser と estar はそれぞれ、説明する対象や状態、状況などによって使い分けられます。
その使い分けの基準は多数ありますが、この記事では、それを簡単に解説します。
estar
estar は一時的な状態、状況を説明するときに使います。ただ、場所について説明する場合は、一時的なものに限らず、永続的なものについても使われます。
estar を使った例文は以下のようなものがあります。
La ciudad de Sapporo está en Hokkaidō.
(札幌市は北海道にあります(場所を説明))
Ella está enfermos. (彼女は病気です。(体調が悪い))
札幌市が北海道にあるのは永続的なものと考えられますが、札幌市という場所について説明しているので estar を使います。
上の2つ目の例文で『Ella』が先頭にきていますが、会話の流れなどによっては省略も可能です(話の流れで対象の性別が分かっている場合)。
『Está enfermos.』だけでは、対象の性別が不明なので、それを明確にするために está の前に Ella を記しています。
ser
ser は estar と比べると、永続的な状態、状況などを説明するときに使われます。例文には以下のようなものがあります。
Soy Lou.
(私はLouです。(名前を伝える))
Éste es el museo.
(これは博物館です。(物などの説明))
上の例文ですと、名前を伝えたり、物や人などについて説明する時は ser を使います。
es は ser の三人称単数ですが、そのままでは『これ』や『あれ』を指すのか区別が付きません。なので、es の前に『これ』を意味する指示代名詞 Éste をつけています。(博物館を意味する museo が男性名詞なので、『これ』を意味する指示代名詞は éste となっています。もし女性名詞に対して使うのであれば ésta を使います。)
常に動詞が三人称の形になる場合の文の構成
以下の内容は、スペイン語では人称代名詞の間接目的格の解説になるのですが、日本語に訳すと(厳密には一致しませんが)人称代名詞の主格っぽくなるので、この記事で解説しておきます。
英語で『I like chocolate.』という文は『(私は)チョコが好きです』という意味で、『私は』という人称代名詞の主格である『I』の後に一般動詞の『like』が続いています。
スペイン語でも、一般動詞に続く場合は『Vive en Japón.』のような書き方が出来ると記事の最初の方で解説しました。
しかし、一般動詞を使う文でも一部の動詞は常に三人称の形になります。例えば、以下の例文を見てましょう。
Me gusta el chocolate.
(私はチョコが好きです。)
上のスペイン語を一般的な日本語に訳すと、上のような訳文になりますが、どちらかと言えば『チョコは私を嬉しい(幸せ)気持ちにさせてくれる』という方がニュアンスとしては正しいかもしれません。
上の例文のように『チョコ』は私の気持ちに作用して『嬉しい』や『幸せ』にさせてくれる物です。こういった表現をする場合は、文の構成が少し特殊なのです。
文の構成
まずは記事の最初で紹介した、主語が一般動詞に続く一般的な文の構成を見てみましょう。
主語の人称に合わせた動詞の形 + 〜。
例: Vive en Japón.
次に、特殊な場合です。
人称代名詞の間接目的格 + 動詞の三人称の形(後に続く名詞の数に合わせる) + 〜。
例: Me gusta el chocolate.
『gustar(〜が好き・〜は私を好きにさせてくれる)』のような一部の動詞は、動詞の形が常に三人称のときのものになり、動詞の前には人称代名詞の間接目的格が必要になります。
また、動詞の後に続く名詞が単数であれば、動詞の形は三人称単数となり、後に続く名詞が複数であれば、動詞の形は三人称複数のものになります。
gustar 以外にこのような文の構成になる動詞には、以下のようなものがあります(一例)。
paracer(〜思う・〜感じる・〜と思わされる・〜と感じさせられる)
permitir(〜許可する・〜可能にする・〜許す)